2019年10月ごろに騒がれた食べログ点数操作疑惑。
正直、記事を書くか迷っていたまま2020年を迎えてしまったわけですが、誤った情報が結構横行しているので、私が知っている事実について記事にしていこうと思います。
- 食べログの点数は飲食店への売上にどう影響するのか
- 食べログの点数が変わる理由
- 点数操作を行う専門業者・金銭受諾や接待を受けるレビュアの存在
- 食べログ側が代理店を制御できていない
この記事を書いている私は、過去7年以上に渡って飲食店のWEBマーケティングに携わり、大手飲食法人の集客部門で働いていた経験もあります。
当然、食べログの集客対策といったテーマで様々な取り組みを行ったこともあり、
点数操作を行う専門業者・金銭受諾や接待を受けるレビュアと接触したことがあります。
こうした経験を基に食べログの評点操作疑惑について、私の知っている範囲で解説していきます。
※考察的な要素も含まれますので、予めご了承ください
食べログの影響力はどれくらいあるのか
まずは、食べログが飲食店にもたらす影響力ですが、全グルメサイトの中でもっとも大きいです。
ぐるなび | ホットペッパー | 食べログ | レッティ | ヒトサラ | |
---|---|---|---|---|---|
月間訪問者数 (2019年3月) | 2893 万人 | 4517万人 | 7036万人 | 6854万人 | 571万人 |
少し前のデータですが、グルメサイト他社と比較しても月間訪問者数がもっとも多いことがわかります。
これほどまでに訪問者が多い理由は、「口コミ」を求めて来訪するユーザーが多いからです。
お店を知ってすぐに予約するという人ももちろんいますが、
- お店を知る
- インターネットで調べる
- 口コミを見る
- 来店する
ざっくりこんな流れで飲食店に行くという方が多いのではないでしょうか。
これまで食べログは、「③口コミを見る」という役割を独占していたわけですね。
こういった理由から他社グルメサイトに比べて訪問者=利用者が多くなります。
当然、訪問者が多ければ食べログ経由で予約をする人数も多いわけです。
食べログの点数は飲食店への売上にどう影響するのか
では、実際に食べログからどのくらい売上が発生するのかというお話をしていきたいと思います。
以下のデータは口コミがまったく入っていない居酒屋のアクセス数です。
2017年5月時点で「1054PV」、2017年6月時点で「4890PV」と大きく伸びている理由は月額25000円の有料プランを始めたからです。
では、食べログからの売上はいくらだったのかというと、
日付 | 組数 | 人数 | 売上 |
---|---|---|---|
2017年5月 | 10 | 55 | 約300,000円 |
2017年6月 | 25 | 140 | 約700,000円 |
上述のような売上でした。
もちろん、エリア(都心部なのか、田舎なのか)やお店の業態、単価、席数などによって差はあります。
「有料プランすごいね!」って話をしたいわけではなく、口コミが入っていないお店でも月間100名以上の集客があるということです。
食べログの特性として、口コミが多く、点数がついているお店ほどアクセスが集まります。
とある街の最もアクセスがあるお店のPVは「月間80000PV」を超えます。
しかも、有料プランに加入しておらず、点数は4.3点。
先ほどの売上データからざっくり計算すると
「700,000円÷4890PV」=「1PV辺り約143円」
「80000PV×143円」=「11,440,000円」
上述の通り、掲載費用が一切掛からず1000万円以上の売上に期待できるわけです。
正直、4点以上のお店は極端な例かもしれませんが、点数さえついてしまえば、有料掲載プランをも上回る集客効果があるというわけです。
食べログの点数が決まる評点基準(アルゴリズム)
食べログの評点基準は「口コミの数」ではなく、「口コミの質」を重視しております。
「口コミの質」の良し悪しを決めるのに、全国の飲食店一つ一つを目視するのは現実的ではありません。
そこで、食べログは過去の口コミ投稿数やその内容、過去に行ったお店など、ユーザー一人一人にもランク付けを行っております。
例えば、口コミを全く書いていないユーザーと300件書いているユーザー、どちらの口コミが信用できるかというと後者であると答える人が多いでしょう。
もう少し細かく掘り下げると、
とあるラーメン屋の口コミを「焼肉店100件の口コミを書いている人」「ラーメン屋100件の口コミを書いている人」では後者の口コミが信頼できるでしょう。
こうした様々な要素でユーザーに対してランク付けを行うことで、質の高い「口コミ」による評点が行われるわけです。
何故、こういった評点基準を採用しているかというと、食べログがサービスを開始した2005年から2010年前後(※時期が若干曖昧です)の飲食店の口コミサイトの質が著しく低かったからです。
具体的なサービス例を出すと「Yahoo!ロコ」というYahooJapanが提供していたサービスでは、口コミのサクラ行為が横行しておりました。
今のYahooIDとは違い、SMS認証もなかったため、アカウントを大量作成して飲食店側が口コミを書きまくることが出来たわけです。
そこで食べログは、誰でも投稿できるが質を担保するために現在の評点基準を採用したわけです。
こうしてみると「食べログのシステムめちゃくちゃいいじゃん!」と思うかもしれますが、
「ユーザーによって与える影響力が異なる」ということは、影響力を持ったユーザーが暴走してしまうリスクがあるわけです。
「やたら上から目線の食べログユーザー」なんて毛嫌いしている飲食店が多いのもこういった背景があるわけですね。
何が一番の問題かというと、「影響力を持ったユーザーがインフルエンサー的な仕事を受けてしまう」ことです。
食べログの規約では、口コミを対価とした金銭の受諾や接待は禁止されてますが、そういった行為を確認する術が運営側にないわけです。
飲食店からすれば点数がつけば売上が上がるため、影響力があるユーザーにお金を払ってでも口コミを書いてほしいのです。
また、グルメサイト各社の掲載料が高額である点もこうした接待行為を行うきっかけになっていると言えます。
食べログの点数が変わる理由
場合によっては月間で1000万円以上の集客に期待できるわけですから、食べログの点数が下がってしまうのは飲食店にとって死活問題です。
巷で騒がれている「食べログの点数操作疑惑」に飲食店が不満の抱くのは当然です。
では、食べログ側が有料掲載しないお店の点数を意図的に下げているかというと答えは「NO」です。
ただし、点数の変更自体は、サイト全体でみると頻繁に行われております。
食べログの点数が変わる理由
- 「口コミ業者」「規約違反のレビュア」の排除
- 市場の変化
- お店の質の変化
点数が変わる主な要因としては上記のようなものが挙げられます。
それでは具体的に解説していきます。
【食べログの点数が変わる理由①】「口コミ業者」「規約違反のレビュア」の排除
点数を上げたい飲食店に向けに、
「口コミを行う業者」や「金銭を受諾して口コミを行うレビュア」が存在します。
こういった業者は食べログのアルゴリズム(評点基準)を分析し、「質の高い口コミ」と評価されるアカウントを意図的に作成します。
あくまで食べログの評点は、アルゴリズム(評点基準)を基に機械的に算出しているため、
こうした不正を行われてしまうと実態とそぐわない点数がついてしまうのです。
こうした不正対策として食べログ側は、不自然な口コミがされている店舗を分析し、アルゴリズム(評点基準)の見直しを頻繁に行っております。
不正対策を重ねる中で、意図的な点数操作を行っていない飲食店までも点数が下がってしまう、
ということも起きてしまいます。
2019年に話題となった点数操作はこうした不正対策の中で、
新たに設けたアルゴリズム変化によるものと、
後述する代理店側の強引な営業がタイミングとして重なってしまったものだと思われます。
【食べログの点数が変わる理由②】市場の変化
点数変化の一つとして、市場の変化による相対的評価が影響していることが予想されます。
例えば「新宿の焼肉店」で3.5点のお店が1000店舗中100店舗、全体の割合では10%だとします。
仮に1年後、3.5点のお店が1000店舗中200店舗に増え、全体の20%になるということはなく、
1000店舗中100店舗の割合10%のまま、口コミ状況に応じて点数が変わるとするものです。
こういった形である程度、相対的な評価を取り入れることで評価の偏りが出てしまうことを防いでいると思われます。
あくまでアルゴリズム(評点基準)の一部であるため、エリアによっては平均点が低い、4点以上のお店が少ないといったところもあります。
【食べログの点数が変わる理由③】お店の質の変化
そもそも飲食店というのは「仕入れ」「加工」「販売」の3つが主な仕事です。
お店の中で行う業務が多いことから、さまざまな要因でお店の質が変わってしまうことが頻繁にあります。
例えば、お店のオーナーシェフが辞めたことで料理の質が落ちてしまう、人材不足でサービス品質が落ちてしまうなんてこともあります。
こうした変化が激しい業種であるため、長期的に口コミがなかったり、直近での口コミの点数が低い場合は、点数が下がってしまうこともあるようです。
点数操作を行う専門業者・金銭受諾や接待を受けるレビュアの存在
意図的に点数を上げようとする存在は、大きく分けて2種類存在します。
- 口コミ業者
- 金銭受諾や接待を受けるレビュア
口コミ業者
口コミ業者の特徴は、
食べログのアルゴリズム(評点基準)を分析、口コミに影響されるアカウントを作成し、サクラ行為を行います。
この場合、お店に実際に足を運ぶことなく、店舗側から写真を提供してもらい、口コミを投稿することが一般的です。
相場としてはピンキリですが、
- 1件の口コミ辺り3万円/1件毎の契約
- 毎月3件の口コミ8万円/半年間の契約
といった料金形態を行っていることが多いです。
このタイプは2018年頃までは、点数が上がっていた店舗もありましたが、2019年のアルゴリズム(評点基準)変更で点数が一気に落ちているお店が多いです。
具体的としては以下のブログで言及されているようなお店ですね。
金銭受諾や接待を受けるレビュア
有名な例を挙げると、2017年に週刊文春に報じられた「うどんが主食」というレビュアが代表的です。
2017年の『週刊文春』六月十五日号において、高評価した店から接待を受けていたと報じられ、九州のある店のレビューでは接待を受けた店を「通常利用外口コミ」のチェックボックスをチェックせずに高評価したとも報じられた。そのほか自身の味覚に合わない店を酷評したなどとも報じられた。報道後、6月9日に食べログは2000件近いすべてのレビューを非表示とする措置をとった。記事の内容については、本人は肯定していないが、食べログのページにて「友人の店は一切レビューしない」と書いている
>出典:Wikipedia
こういったレビュアは、口コミ業者と異なり、
ある程度、お店側にもクオリティを求める人が多いです。
口コミ業者の場合、
プチぼったくり居酒屋など悪質なお店であっても関係なしに口コミを受けることが多いですが、
レビュアの場合はこういったお店からの依頼は受けない方が多いです。
あきらかに悪質な店舗を薦めるような口コミを書けば、信用に影響が出てしまいます。
また、金銭の受諾や接待は規約違反のため、
食べログ側に目を付けられてしまうとアカウントの影響力が無くなってしまう可能性があるためです。
レビュアに依頼するお店は、高級レストランや企業系の飲食店などが多く、
実際にレビュアが来店した際に少しでも気に障ると口コミを書いてもらえないといったこともあります。
そのため、飲食店側はレビュアに口コミを依頼する際に過剰な接待などを行い、結果的に傲慢な態度のレビュアとなってしまっているわけです。
レビュアへの依頼もピンキリですが、
1件辺り3万円~10万円+交通宿泊費
くらいが私が飲食法人に勤めていたときは相場でしたね。
こうしたレビュアを取りまとめている企業や食べログ代理店もいるため、そうした仲介人が入ってる場合は高額である傾向です。
一部の飲食店では、こうしたレビュアへの口コミ依頼は当たり前と化しており、業界としてのモラルの低さが伺えます。
悪質な代理店による脅迫まがいの営業方法にも問題がある
食べログから「有料掲載しないと点数を下げる」と連絡があった、
なんて声を聞いたことがあるかと思います。
これは食べログ側ではなく、悪質な代理店による営業の可能性が高いです。
というのも食べログは代理店による販売をメインに行っているため、
運営元である価格コム側から営業を行うことはほとんどありません。
食べログの代理店を行っている会社は多く、質の低い会社も存在します。
例えば、代理店の担当が前述したレビュアを束ねて、口コミのあっせんを行っていることもあります。
私が過去に契約していた代理店では、
何故か別会社で代理店契約をさせられていたことがありました。
本来契約するはずの代理店の担当者が個人的に知人に契約を回し、金銭を授与していたようです。
そもそも代理店が悪いから食べログ側の責任がないという話ではなく、こうした悪質な代理店に販売を委託していることが問題なのです。
現在、飲食店は口コミ業者を利用する価値はあるのか
今年に入って、知り合いの飲食店オーナーから
「1件3万円で口コミ書いてくれる業者がいるんだけどあがるかな?」
こんな質問が来ました。
この飲食店オーナーはぼったくり居酒屋みたいなお店をやってるわけではなく、
めちゃくちゃしっかりしたお店やってます。
そういったお店のオーナーでも「口コミのやらせ=集客戦略の一環」として考えてるわけです。
本当にモラル低いです。。。
とはいえ、私は説教垂れる気はないので、
- 「その業者のアカウント見ないとわからないですけど、実来店しないなら意味ない」
- 「2017年~2018年にかけて業者入れてるであろう店舗の排除としてアルゴリズムが大きく変わった」
- 「その影響でニュースで取り上げられるような評価操作疑惑が浮上した」
こんな感じで回答しました。
ぶっちゃけ怪しい業者と関わるつもりさらさらないので、勝手にすれば?といった感じですね。
こういった不正による集客は、本質的に意味がありません。
実際に口コミが真実であるかは割とどうでも良くて、お店の実態との相違が問題なわけです。
例えば、口コミ業者やレビュアが金銭の受諾により書いた口コミが事実で、実際に来店したお客さんが口コミ通りだねって感じるのであれば問題ないわけですよ。
でも、多くの場合はそうでないわけです。
特に、口コミ業者の場合、実際に利用した経験を基にした口コミではないので、精度が非常に悪いです。
飲食店の方は、こうした業者から営業をかけられても絶対に依頼しないようにしましょう。
まとめ
私が知っている範囲で、食べログの点数操作疑惑について記事にしてみました。
「人が集まる=悪意ある人間が利用する」
食べログの掛かる問題は、これに尽きると思います。
私が知らない土地で飲食店を探す際、
たまに食べログを見ることもありますが、必ずグーグルマップ上での口コミも見るようにしてます。
どちらか一方だけ評価が低いお店や、
やたら☆1と☆5に偏っているお店は避けるようにしてます。
ちなみに、媒体側が掲載店舗をしっかりと審査している一休.comやOzmallは、
今まではずれだと感じたお店にあたったことがないので個人的におすすめです。
食べログに限らず、インターネット上の口コミは嘘と真実を見抜くことが難しいことも多いので、参考程度にしておきましょう。
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