飲食店の中でも居酒屋は参入障壁が低いため、はずれのお店も少なくありません。
味が悪いだけならまだしも、サービス料やチャージ料といった名目で会計を水増しする、いわゆる「ぼったくり居酒屋」も存在します。
こうしたお店は料金が高いだけでなく、サービス・料理の質も低いことが多いです。
今やスマホが普及して「お店の評判は、口コミサイトやSNSですぐに拡散されるのにどうしてぼったくり居酒屋はなくならないの?」そんな疑問をお持ちの方もいるかと思います。
この記事では、7年以上飲食業態に携わってきた私が、ぼったくり居酒屋の実態とグルメサイト上での見分け方について解説していきます。
ぼったくり居酒屋の集客方法
元々、ぼったくり居酒屋が行う集客の常套手段はキャッチ集客とグルメサイト上での誇大広告の2つ。
今でもキャッチ行為を行っているお店は多くありますが、新宿や大阪市といった都市部ではキャッチ行為禁止を条例に盛り込んだことで一時に比べてその数は減少しました。
では、ぼったくり居酒屋は一体どこへいったのかというと以下の通り
- グルメサイト上での誇大広告、高額の掲載費用を投下
- 規制の緩い地方都市で営業
グルメサイト上での誇大広告、高額の掲載費用を投下
キャッチ規制が厳しい街では、グルメサイトを始めとした広告に予算を投下することでなんとか集客しようとします。
ぼったくり居酒屋がグルメサイト上で集客する手法をいくつかご紹介します。
誇大広告
特に多くみられるのは、実物と大きく乖離した写真。
料理写真はもちろん、悪質なお店の場合、内装の綺麗な別店舗の内観写真を使用していることも多々あります。
こういったお店は、以前入っていたお店の内装をそのままに開業する居抜き物件での営業が基本です。
よほど元の内装がよくない限り、改装工事をしたり、老朽化している箇所の修繕を行うことが一般的です。
ぼったくり居酒屋の場合、改装や修繕にお金をかけないことが多いです。
そのため、グルメサイトではめちゃくちゃおしゃれな雰囲気なのにやたら内装がボロボロといったこともざらです。
こうしたお店の特徴は「コスパNo.1」や「飲み放題付き7品コース2000円~」といった価格の安さと「市場直送」「黒毛和牛」など品質の高さを伺わせる文面が入り混じっていることが多いです。
現実的に飲み放題と料理7品が付いて2000円~3000円程度で提供するとなると、よほど仕入れが安いルートを持っていない限り、料理の分量は非常に少なくなります。ましてや、黒毛和牛といった品質の高い食材なんて使えば利益は残りません。
そもそも品質の高さを匂わせているのに、食材についての情報が薄っぺらいんですよね。。。
グルメサイトへの高額予算の投下
グルメサイトの掲載順は一部を除いて、高額な掲載費用を支払うことでサイト内検索において上位表示されます。
特にぼったくり居酒屋が多く予算を投下するグルメサイトは「ホットペッパーグルメ」と「ぐるなび」。
他のグルメサイトも掲載費用に応じて優先的に掲載されることがほとんどですが、この2サイトは広告媒体としての側面が非常に強いです。
例えば食べログであれば、有料掲載プランは最も高いものでも月/10万円。
10万円より高額な商品は提供しておらず、口コミサイトであることから口コミ件数・点数がついていないと予算を投下しても集客効果が出づらいです。
対して、「ホットペッパーグルメ」と「ぐるなび」は、口コミや点数は重視していないため、掲載順位が高い店舗にアクセスが集まりやすいです。
この2サイトでは、新宿・渋谷といった密集したエリアにおいて、店舗一覧ページ上で上位表示されてる店舗は最低でも月/20万円、多く費用をかけている店舗であれば月/60万円ほどの掲載費用を支払ってます。
居酒屋の場合、広告等の販管費用を売上の5%程度に抑えないとまともな料理を提供するのは難しいです。
つまり、月間の販管費用を100万円かけているのであれば、月間で2000万円ほど売上げる必要があります。
もちろん毎月そこまで売上があるわけないので、人件費・食材費を削ることで利益を出しているわけです。
当然、本来必要な人件費・食材費を使えなければ、料理やサービスの質は悪くなります。
加えて悪質なお店では、サービス料・席料といった謎の名目が会計に追加されたり、えびせんのようなお粗末なお通しで500円取るといったお店も多いですね。
「ホットペッパーグルメ」と「ぐるなび」で掲載順が高いお店の全てがぼったくりというわけではありませんが、人気店や有名店は少ないのは、集客力がないお店が掲載費用を掛けすぎているからです。
客離れが起きたらとりあえず店名変更
こうしたぼったくり居酒屋は、時間が経てば当然悪評が広まります。
スマホからお店の評判を簡単に調べることが出来る時代ですから、ぼったくり居酒屋なんて長く持ちません。
そこで、ある程度売上が落ち込んできたタイミングでお店の名前を変えて営業します。
働いているスタッフ・内装・メニューは同じ、ただ店名を変更するだけです。
中には、メニューは変更するお店もありますが、しょせんぼったりくり居酒屋なのでメニューを変えたところで料理の質は変わりません。
グルメサイト上では「ニューオープン」とか「リニューアルオープン」とか謳ってますけど、名前変えただけです。
なぜ店名変更を行うとグーグルマップや食べログ、レッティといった口コミ情報をリセット、つまりは都合の悪い口コミを削除できるからです。
ダブルネーム掲載
ぼったくり居酒屋では定番の集客方法であるダブルネーム
一つのお店に名前を二つ付け、グルメサイトにはそれぞれ違うお店として2店舗分の情報を掲載するのです。
※過去にはトリプルネーム・フォースネームといったお店もあった
メニューもコースも空間も同じ一つのお店なわけですから、お客さんからしたら意味不明です。
加えて、サービスやメニューのクオリティも分量も不十分ですから、当然クレームが入ります。
基本的にはお店にクレームが入るわけですが、こんな店を掲載してるのってどういうことなの?といった感じでグルメサイト側へクレームが入ることも多々あります。
グルメサイト側としては、一つのお店から2店舗分の掲載料を取れるわけですから、収益的にはありがたいけど、サイト自体の信用問題になるよねってことで掲載規定を改める等を行うサイトもあります。
過去にダブルネーム掲載が頻繁に行われてきたグルメサイトは「ぐるなび」「ホットペッパーグルメ」の2サイト。
この2サイト上でダブルネーム掲載が頻繁に行われた理由は、掲載料に応じて、掲載順や店舗情報の露出拡大される、いわば広告媒体としての側面が非常に強いからです。
要は、集客効果=掲載費用といった傾向が強いサイトであるため、お店の知名度や評判が多少悪くても集客出来るわけです。
現在でのダブルネーム掲載に対しての各サイトの対応は以下の通り。
ぐるなびはダブルネーム掲載への規制を強め、実質的にダブルネーム掲載は出来ません。
横丁のように同じ住所に複数の店舗が入っている場合もあるため、同住所での掲載の際には、1店舗ごとのレジ情報の確認(店舗名が記載されたレシートの確認など)や営業許可書に提出などが必要です。
仮に、ぐるなびの規制を掻い潜って、ダブルネーム掲載をしても、事実が判明した時点で掲載停止、最悪の場合、取引停止といった厳しいペナルティを設けているようです。
ホットペッパーグルメのダブルネーム掲載への対応は、ぐるなびに比べると甘く、今でもダブルネーム掲載することが可能です。
ぐるなび同様にレジ情報の確認(店舗名が記載されたレシートの確認など)が入りますが、リクルートが提供しているAirレジを使用すれば、2店舗分のレジ情報を作り上げることは容易です。
ダブルネームに関してのクレーム(レシートの店舗名が違う)といった客観的にダブルネームによっての不利益を示すことで、ペナルティを課す場合もあるようです。
今後、ダブルネームでの掲載を全面的に禁止する動きがあると聞きますが、ダブルネーム掲載店舗が多く、規制することでホットペッパーグルメの収益に大きな影響が出るとのことで抜本的な改善は出来ていないようです。
具体的にどの程度影響があるのかというと、ホットペッパーグルメでダブルネーム掲載している店舗の多くは「月々19.8万円(税込)・1年間の契約=237.6万円(税込)×2店舗分=475.2万円(税込)」の掲載費用を支払っていることが多いです。
現在、ダブルネームとして掲載している店舗の総数はわかりませんが、10店舗で約2000万円、100店舗で約2億円もの金額がホットペッパーグルメ側の売り上げに影響します。
昔に比べてSNSや飲食店の口コミに関する情報、グルメサイトが増えてきたので、年々ダブルネーム掲載の集客力は下がってますが、今でもホットペッパーグルメ内では、新宿・渋谷を始めとした都心部・地方都市を中心に多くダブルネーム掲載店が存在するのでお店選びの際には注意が必要です。
やらせ口コミ・点数操作
食べログやグーグルマップ上でのサクラ行為は飲食業界の闇として有名です。
食べログに関しては、口コミの質を重視しており、評点についてのアルゴリズム自体を日々更新しているため、年々点数操作が難しくなっております。
しかし、食べログの点数を上げることで飲食店から報酬をもらう業者も存在しており、いたちごっこを繰り返しております。
最近話題の課金しないと点数が下がる、下がったというニュースを見かけますが、個人的にはサクラ業者排除のためのアルゴリズムアップデートと有料プランの営業が偶然重なったものだと思います。
また、グーグルマップ上での口コミは、質より量を重視していることから口コミがあまり入っていない場合、点数操作を用意に行うことが出来ます。
あまりにも口コミ件数が少ない場合は、あまりアテにならないことを覚えておきましょう。
客引き規制の緩い地方都市・郊外で営業
客引き行為への規制は都心部を中心に厳しくなっており、悪質な場合、罰金刑・懲役刑といったリスクが非常に高いです。
客引きへの報酬は、集客したお客の飲食代の10%~20%ほどですが、こういったリスクの高いエリアでは、25%もの報酬を取る客引き業者もいるようです。
こういった都心部は賃料も高いこともあり、いくらぼったくり居酒屋とはいえ経営が厳しくなっております。
上述したグルメサイトでの誇大広告での集客にも限界があることから、近年では地方都市・郊外に出店するぼったくり居酒屋も増えてきました。
客引き規制が都心部ほど厳しくないこと、グルメサイト上での集客を行う上でも競合が少ないためです。
都心部と比較して一見客だけでは厳しく、すぐに悪評が広まりますが、そんなときは店名変更を行います。
都心部と比べて家賃・人件費といった経費が掛からないため、売上が多少低くても儲かるようです。
ぼったくり居酒屋はグルメサイトにとって優良顧客
一般的に飲食店の販促費用は、3%以内に抑えるのが適正と言われております。
もちろん、その他の経費や業態・運営会社の規模によりますが、居酒屋の場合、売上の5%以内に抑えないと利益的にも厳しい印象です。
ぼったくり居酒屋の多くは、原価率・人件費を大幅に削っているため、販促費用を多くかけることが出来ます。
つまり、ぼったくり居酒屋は「グルメサイト」にとって、高額な掲載費用を支払ってくれる優良客なわけです。
グルメサイトの収益の多くは、飲食店向け有料プランの掲載費用です。
有料プランでの掲載を飲食店に行ってもらうには、集客効果がないと利用してもらえません。
そのため、多くのグルメサイトでは、掲載費用が高いお店を優先的に上位表示します。基本的にウェブ上の検索システムは、掲載順位が高いほどクリック率が高くなります。
高額な掲載費用を支払う=クリック率が高い=予約に繋がるため、集客出来てしまうわけですね。
ちなみにネット上では「食べログ」を批判する記事を見かけることが多いですが、「食べログ」の有料プランはグルメサイトの中では良心的です。
というのも、「食べログ」は口コミサイトなので、点数・口コミ数順といった掲載費用に影響されない検索機能も併せ持っているためです。
繁盛店の場合、「食べログ」「レッティ」といった口コミサイト上で評価を受けていたり、リピート戦略といった既存客の囲い込みに力を入れることで販促費用を抑える努力をしてます。
ぼったくり居酒屋の見分け方
確実にぼったくり居酒屋を回避するのは難しいですが、ぼったくり居酒屋を回避する方法をいくつかご紹介致します。
お店を選ぶ際は複数のグルメサイト・口コミを確認する
ネット上でお店を予約する前に、他のサイトでの評判を必ず確認するようにしましょう。
食べログを始め、グルメサイトの口コミは基本的に悪い内容のものは削除されます。
これは、グルメサイト側がお店側から訴えられるリスクを回避するためです。
そのため、口コミの量を重視するグーグルマップ上での口コミ・点数も併せてみると良いでしょう。
複数のグルメサイトや口コミ情報を比較して、片方だけやたら評価が高い場合はやらせ口コミをしている可能性が高いです。
また、評点だけでもレビュー可能なグーグルマップの点数は平均点だけでなく、点数の内訳もチェックするようにしましょう。
例えば、上記では平均3.4ですが、星5と星1の割合がほぼ同一です。
ぼったくり居酒屋の場合、平均点は3点以上あるけど、点数の内訳をみると低評価と高評価が入り混じっていることが多いのも特徴の一つです。
住所でグーグル検索をかける
上述で解説したダブルネームを見分ける方法として有効なのは、店舗の住所でグーグル検索をかけることです。
同住所に複数の店舗がヒットした場合、ダブルネームである可能性や店名変更を頻繁に繰り返している可能性があります。
もちろん、建物によっては、同フロアに複数の飲食店が入っていることもありますので、ストリートビューから建物を確認してみると良いでしょう。
また、店名でグーグル検索をした場合に、マップ情報が出てこないお店も要注意です。
というのも、グルメサイト上ではページをしっかり作っているのに、グーグルマップに情報を登録していないというのは意図的であると考えられるからです。
こういった形でグーグルを活用することで、ぼったくり店舗を回避することが出来ます。
店名の表記に気を付ける
主に「ホットペッパーグルメ」ですが、ぼったくり居酒屋は、店名の冠に特徴があります。
- 〇〇バル…和食バル、肉バル、個室バルなど
- 〇〇個室…完全個室、隠れ家個室など
- 〇〇×〇〇…肉バル×完全個室、隠れ家ダイニング×和食バルなど
ぼったくり居酒屋は上記のような冠を好みます。
割と③のような冠をつけているかなり怪しいですね。
実際、ユーザーの反応が良いので、ぼったくり居酒屋以外が真似してつけてることもありますが、基本的に冠をグルメサイト毎に変えているお店は店名に思い入れやこだわりがないのです。
加えて「〇〇バル」という冠なのに、店内写真が明らかにバルじゃないお店は基本的にアウトです。
そもそも100席以上の大箱かつあきらかに居酒屋の内装だろってお店はバルではないですから、店名を偽ってるわけですね。。。
予約したお店がぼったくり居酒屋だったときの対処法
期待して来店したお店がぼったくり居酒屋だった場合は、スタッフにクレームを入れたところ、うやむやな回答しか得られないこともあります。
そうしたときにはグルメサイト側へクレームを入れることで掲載停止といったペナルティを課してくれることがあります。
ただし、グルメサイト側へクレームを入れる際には、グルメサイト上での掲載情報と実店舗の相違があった場合のみです。
- 掲載情報との相違があった
- 事実である証拠となる写真・動画を併せて送る
例えば、「サービス料・チャージ料といった記載がグルメサイト上になければ、レシートの画像を送付する」「料理・空間が全く違うのであれば、実際の写真・動画を送付する」などです。
客観的に判断できる証拠を必ず添付するようにしましょう。
また、あまりにも悪質なお店の場合、消費生活センターへ相談することも効果的です。
参考リンク:絶対に入ってはいけない!「ぼったくりバー」-楽しい気分が一転、高額請求-
まとめ
長年、飲食業界に関わってくるとこういった悪質な飲食店にも詳しくなります。
グルメサイトを使った集客力が非常に高いので、ぼったくり営業をせずに事実として営業すれば良いのになぁ、とよく思います。
現実的に誇大広告の内容を実現するのは、難しいということなのでしょう。
楽しみにしていた食事がぼったくり居酒屋のせいで台無しになるなんて最悪ですから、被害の未然防止に役立てば幸いです。
以下の記事では、グルメサイト上で嘘をつく飲食店の見抜き方を5つほどご紹介してますので、興味がある方はぜひご覧ください。
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